名言集講座

講師基本情報

中野信子
氏名 中野信子
生誕地 東京都
birthday 1975年
出身校 東京大学大学院医学系研究科博士課程

略歴

中野信子(なかの のぶこ) 脳科学者、医学博士。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了。 2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。 本の執筆、テレビ番組のコメンテーターとしても活動中。

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【中野信子】


1 運の良さ、悪さはうつります。運がよくなりそうな人とお付き合いしましょう
みんな平等にチャンスは降っているし、リスクも降っているのですが、なぜ運がいい人、悪い人が生まれるのかというと、行動が 違うというのが最近研究で明らかになってきました。行動というのは、実は周りの人の行動がうつってきます。行動パターンというのが。 それで、運の悪い人の行動を無意識に真似ていると、自分まで運が悪くなります。なので、周りにいる人を選ぶというのはとても大事な事なんです。 運がいい人の思考、行動パターンとして外向性と経験への開放性というのがあります。外向性は、社交的で尚且つ客観的に自分を見る能力が高い。 経験への開放性は、新しい物が好きで好奇心が強い事。自分の現状には満足しているが、よりよい物を求めたい性質の持ち主。




2 新しい物を受け入れる脳の手間暇を惜しむようになったら、「老化の一歩」
脳はそもそも作りとして、なるべく使わないで済むようにコントロールされています。脳は人体の1/4のカロリーを使うぐらい、エネルギーを使います。 なので人体はなるべく脳を使わないようにしたいという本音がある。という事は、なるべく考えたくない訳です。ボーっとしていたい。 そうすると歳を取れば取るほどそういう傾向は強くなりますから、なるべく今まで知ってる方法で、自動的に問題を処理出来るならそうしたいと 思ってしまう。なので新しい問題や、新しい出来事とかは起きて欲しくない、と思うようになり、新しい価値観がやってくると、「そんなの意味ない」と 言い訳して否定してしまう。パソコン、電子辞書、電卓なども世の中に出てきたときは今では考えられないが、批判をする人がいた。 新しい物を受け入れる脳の手間暇を惜しむようになったら、「老化の一歩」と言っても過言ではないと思います。




3 5月病は生理的変化、あまり理由を考えない事
5月病は時期的な問題というのがあり、日照時間が変わって行く時期です。日照時間が変化していくとセロトニンの分泌率が変わっていきます。 気温、睡眠時間、新しい環境のストレスなどで脳内の物質のバランスが崩れていきます。これによってセロトニンの分泌が落ちて行きます。 セロトニンは幸せや、安心、やる気を感じる物質です。季節的な変化によってこの物質の分泌は乱れやすくなります。 なので四季折々の変化がある国の人は、不安な気持ちになりやすいというのが分かっています。5月病は生理的な変化に起因 しているのですが、脳は学校や職場で上手く行ってないなどと違うところに理由を求めたがります。身体の変化でしかないのに、 無理やり理由を探すのです。生理的な変化であり、不安の原因をあまり深く考えない事が大切です。 セロトニンの分泌を一時的に、急いで増やしたいなら甘い物を食べる。慢性的に増やしたいなら赤身の肉を食べましょう。他にはナッツや乳製品があります。 温泉やお風呂に浸かるのもセロトニンを増やしてくれると言われています。




4 運をよくしたいと思ったら、一つはポーズの取り方。形から入る事が大事です。 面白い社会心理実験がありまして、肩をすくめたり、背中を丸めるなど、弱いポーズを取らせたグループと、 強いポーズ、胸を張ったり、足を組んで偉そうにしてみる、そういうポーズを取らせたグループと、弱いポーズの グループを比べると、弱いポーズの方はストレスホルモンの値が上がっていて、男性ホルモンの量が減っている事が分かりました。 ストレスホルモンの値が高いと海馬が委縮する、端的に言って記憶が悪くなる。男性ホルモン濃度が代わってくるというのは、 勝負強さにも係わっており、勝てるところで勝ちを逃しやすくなります。




5 他人を引きずり下ろす快感
サイコパスより怖いのは普通の人。普通の人が持っている怖さの一番分かりやすい例として、シャーデンフロイデが挙げられる。 シャーデンフロイデはドイツ語で他人の不幸を喜ぶ気持ちを意味する。これは日本人の特質に近いものがあり、 よく見られるシャーデンフロイデの形態としてはネットにおける炎上。ちょっとでもいかがなものかっていう事をした人に対して、 蟻が群がる様に叩く、あれがみんな喜びを感じたくて叩く訳です。日本人の考え方に影響を与えた要因として、日本が稲作の村文化で あった事が大きく寄与していると考えられます。まず稲作と麦作栽培で、集団主義的傾向が違うという論文がありまして、 麦作の方が個人主義的傾向が強く、稲作の方が集団主義的傾向が高く自己犠牲的な振る舞いが美しく見られるという事が言われています。 稲作の方が栽培が大変なので、個人ではなく集団としての団結が何より求められました。共同体を維持するためには共同体のルールを作る必要があり、 そのルールを破った人間にはみんなで寄ってたかって罰を与える。村を維持する、 社会を維持するための所謂村八分の考え方が現在の不倫叩きやネットにおける炎上につながっている。




6 サイコパスとは他人に共感できない人の事。共感する領域というのが脳にはあるのですが、その領域の活動があまり 高くない状態にあります。言うならばサイコパスには他の人が「モノ」に見えています。ゲームで言えば「村人1」の様にしか、 他人を認識できない人。愛について考える事はなく、他者を利用できるかどうかだけ考えている。利用できなくなればさようなら。 ただ、不思議な事にサイコパスの方が、トランプ大統領の様に支持を集めやすいというのがあります。良い人の方が収入が低かったりって事もあります。 例えば人間は、自分の行動を支配者のような人が決めてくれたりとかすると、その人に従ってしまおうという気持ちが高くなりやすいです。 その方が楽だからです。自分で行動を決めて動く事より、誰かが決めてくれるならそれでいいと、楽しようとする特性が人間にはあるのです。




7 自意識過剰で苦しまないためにはどうすれば良いかという話ですが、まず自意識が強いというのは一つの機能であり、才能とも言えます。 自意識が強い人は学習効果が高いと考える事が出来ます。何もかも自分に言われているという事で、自分にフィードバックする機能だと言える訳です。 スペインの画家のサルバドール・ダリという方も潜在的自己評価が低く、周りの人にいつも自分や自分の作品がどう思われているのか 気になってしょうがない、という人でした。周りの人に認められたい、その思いが創作へのモチベーション、創意工夫につながり、 数多くの名作を残しました。自意識が高いという事も才能の一部であったと考える事が出来ると思います。芸術家、芸能人の方には 自意識過剰な方が多いと思います。それは自意識がそのまま才能になる世界だからです。自意識というのは歳を取れば減っていきます。 自意識が強いうち、若いうちはそれを使って自分を高める努力をしましょう。




8 不安を感じたら、不安を直視して対処しましょう
不安になった時、不安だなという気持ちを無理やり押さえつけないようにする、不安を回避しようとしたり、 何かに依存する事によって不安じゃなくなる状態を続けていくと、回避依存傾向と言いますが、自分が不安であるという気持ちが より強くなってしまう。なので、なるべくその不安から目を逸らさずに、「今私は不安な状態でいるね」という認識をしていく事が まず第一歩です。メタ認知って言うんですけど、自分の不安な状態を認知する、そうする事によって実はその不安っていうのが認知の歪み だったりするぞっていう事を考えるようになります。今ある不安はこういう事が原因で起きていると、冷静に考えるようになります。これが 2ステップ目なんですけども、その2ステップ目の不安の処理という所を、ここは他人の助言を使ってもいいところです。 不安な状況が起きているその原因を、なるべく解決してやる、その事によって不安が軽減されていくのでそういう正しい対処が出来れば、 ストレスも脳にとっては良い刺激になっていきます。 




9 辛い思いでほど何度も思い出して、その中に価値を見出しましょう
過去の辛い出来事を忘れるためにはどうすればよいか。人間の脳はもともと、都合の悪い事は忘れるようになっていますが、 強い感情と結びついた記憶はなかなか消えにくいです。しかし、大きな成果を上げる研究者などは、いい意味で粘着質の人が多く、 ずっと長い間、同じ研究をして成果を収める人もいるので、忘れにくいという性質を活かして成果を上げる人もいます。 ただ失恋したであるとか、嫌な思い出をずっと引きずるのは辛いと思います。それをどうにかしたいという場合には何度も思い出して、 その事を言葉にするという方法があります。人間は思い出さないようにしようとすればするほど、思い出したくない事に注意が向き、 思い出してしまいます。記憶というものは、思い出すたびにタグがついていく様なもので、辛かった記憶も思い出して、仕舞い直していく度に、 記憶そのものは変わらないけれど、記憶の意味合いが変わっていきます。意味を変えるという作業をする方が忘れやすいという事になります。 つまり強烈な感情が治まっていくので、それと結びついた記憶も薄れて、仕舞っておきやすくなります。辛い思いでほど何度も思い出して、その中に価値を見出しましょう。




10 物事を悪く考えるのも才能です
災害の多い地域では、物事を悪く考える人の方が生き延びる事が出来る。だから日本人ってちょっと悲観的だって 言われますけど、災害の多い国だから、こちらの方が適応的なんです。つまり、物事を悪く考えるのも才能です。


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